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ユニス・レーン率いる手勢がルーラン村に辿り着いたのは、真夜中のことだった。
それは、夜営を嫌っての強行軍だった。
ほとんどの者が負傷している状況での夜営が、自殺行為に等しかったからだ。
この強行軍で、新たに何人かの兵士が命を落としたが、誰もユニスを責めようとはしなかった。
「指揮官としては間違ってないさ」
天野翔(あまの しょう)がユニスの采配を、そう評価する。
「間違ってないとしても、俺は気に入らない」
そう答えたのは、中尾明比呂(なかお あきひろ)だった。
「何が気に入らない?」
「何がって、休める場所はいくつもあっただろう。なのに何で休まなかったんだ?」
明比呂自身が休みたかったわけではない。地球人の明比呂と翔、そして宮里弥生(みやさと やよい)の三人は、疲れを全く感じていなかった。明比呂がユニスの指揮に不満を感じているのは、負傷した兵士を抱えての行軍そのものにあった。
「追撃を恐れてのことだろう。あの負傷者の数で夜営したら、哨戒の人数が足らない。俺と明比呂の二人で寝ずの番をしてもいいが、全周囲の警戒は無理だ。この村の距離を考えれば、強行軍は正解だよ」
「…」
明比呂は翔に反論できなかった。正確には、翔の発言の半分も理解できていなかった。
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