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「もともとは地蔵は地蔵菩薩と言って、六道を輪廻する衆生を救う仏っていうのは知ってるよな?」
「知らん」
明比呂にも弥生にも、翔の説明は理解不能なものだった。そんな二人を無視し、翔は話を続けた。
「また、三途の川の塞の河原で子供たちを鬼から守る地蔵も常識だが」
「どこの常識よ?」
「ここまでは仏教の話だけど、日本に伝来した地蔵は道祖神信仰と習合されて、町外れや辻に『町の結界の守護神』として配置されるようになったのさ」
「じゃあ、ここは日本なの?」
「いいや」
弥生の質問に翔は首を横に振った。
「ギリシア神話のヘルメスも道祖神的な性格も持っているんだ」
ヘルメス神とはオリンポス十二神の一柱で、商業や旅人の守り神とされ信仰されていた。
古代アルカディア地方では『ヘルマ(Herma)』という石の柱を街道に立て、道中の安全や多穣多産を祈願していた。ヘルメス神の信仰は、それに由来するとされている。
「道祖神信仰は、日本もヨーロッパも共通だ。逆に言えば…」
そこで翔は言葉を区切った。
「逆に言えば?」
明比呂が先を促す。
「道祖神信仰のオリジナルがミドル・ワールドで、地球界の道祖神信仰はミドル・ワールドの模倣に過ぎない、と考えられなくもない」
「なるほど…」
明比呂と弥生が口を揃えたが、何がなるほどなのか、良く分かっていなかった。
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