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今の自分が置かれた状況では、そこまで考えている余裕がないことを思い出したのだ。
「ふー」
そんな翔の横で、土埃だらけになった学生服からミドル・ワールドでは一般的な兵士に支給される服に着替えた明比呂がベッドに座り込んでいた。
地球で《ゴブリン》と戦い、ミドル・ワールドで《ボブゴブリン》、《ハーピィー》と連戦、夜を徹しての行軍と続き、ゆっくり腰を落ち着けたのは久し振りのことのように思えた。
考えるのを止めた翔は、テーブルの上に用意されたパンと骨付き肉とスープを食べ始めていた。
「よく食べられるな」
「美味いぞ。味付けは薄いけど。これが《ハーピィー》とか《コカトリス》の肉じゃないといいんだが」
「そういう問題じゃなくて、この状況でよく食べられるなって言ってるんだ」
「腹が減っては戦はできない。お前も食え」
翔に促され、明比呂も食卓に座った。
「悪いな、こんな事態に巻き込んじゃって」
不意に明比呂が翔に頭を下げる。
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