第10話 ホーリー・シールド

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 ギリシャ神話が浸透する以前には、ギリシャの先住民族のペラスゴイ人は『あの』ポセイドンを主神とし、メドゥーサは主神の妻として君臨していた。  この時点で、メドゥーサはアテナとメティスを内包した女神であり、死と再生を司る蛇神であり、女性の英知の象徴であり、大地母神だったのだ。  だが、メデューサという女神は、ギリシャ神話成立という大きな波に飲み込まれ、転換期を迎えることになる。  ギリシャ神話が古典期を迎えると、アテナとメドゥーサの繋がりは消し去られ、アテナは天空神ゼウスの頭から生まれた英知を象徴する女神となり、メドゥーサは恐ろしい怪物として葬り去られた。  紀元前二千年から千百五十年の前史時代のギリシャでは、アテナの胸当てには当然のようにメドゥーサが描かれていた。  これはアテナとメデューサが同一神であり、アテナとメデューサ融合した姿と考えられる。  だが、女神アテナを都市の守護神として祭ったアテナイまたはアテネと呼ばれる都市国家の市民が、アテナとメデューサを同一神としてではなく、別々の存在としたかったのではないか、というのが翔の考えだった。
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