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5万円を用意するために、兄の車で銀行まで乗せてってもらった。
ポロっと『彼氏に持ってこいといわれたんだ』と伝えた。
なんだそれ…と冷静な兄は呆れていた。暴力のことは口にせず、兄の車から降りた。
「ついたぞ。」
彼の車のフロントガラスは、ヒビ割れていた。お金を渡す。
そして
「こんなにキレさせる女、お前が初めてだ。
むかつくっ!」
膝を、ばりかかれる。髪をひっぱられ頬を平手打ち。グーでお腹を殴られ、足で太腿を蹴られた。
もう泣くしかなかった。
声も出ず、過呼吸になった。
背中をさすられ「大丈夫?今日はもう帰りな。」と車から降ろされ歩いて帰った。
家に着くと兄は心配して私の部屋に様子を見に来た。足にアオアザをみつけ、驚いていた。
私が、大事にしていたオメガの時計がある。元カレからの貰い物だった。一度Uとのデートのときに付けて行った。
「それ男からのプレゼント?」
『あっ、うん』
急に嘘がつけなかった。
ある日、彼が喧嘩をふっかけてきた事があった。
もうストレス発散に暴力を振るいたかっただけだろう。
「まじうぜぇ!お前殴りにいくで。オメガの時計持ってこい。壊してやる!」
来る途中に、タイヤがバーストしたらしく、タイヤショップへ金を払いに来いと言われた。
店では「バーストしちゃった」と笑顔で笑う彼…気持ち悪かった。今から怒るのと正反対な彼にぞっとした。
「お金払っといて」
3万円くらいだったと思う。店員もなんで女の子が払うんだろう?という顔していた。
その店員に『助けて。私殴られる』と伝えようかと思ったけど出来なかった。
その日は、ドシャ降りだった。車が直り、乗るとすぐ一発お腹を殴られた。
「右手で殴ったら内蔵破裂かもな。左手でしてんだからありがたく思えよ」
今でも忘れられないほどのフレーズ。殴られるのは、絶対ありがたくない。
部屋着で、すっぴんの私に対して「だせーな」と嘲笑う。 もう侮辱は、さいさん言われた。
「時計は?」
手渡す。
車をとめ、ドシャ降りの中外にでていき、声を荒げながら、地面に時計を叩きつける。
私は車の中で泣きながら見るしかなかった。
壊れたものを持ってきた。粉々に、分解されてた。
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