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地元では知らぬ者のいない名門私立高校、聖ジュリアン学園高等部の前では、すでに毎朝の恒例行事となった光景が繰り広げられていた。
学園の制服を着た少年と、同じく制服姿の少女が二人、年季を感じさせる校門をやや早歩きで通り抜ける。
「ほらマサ、なにぐずぐずしてるの。あなたに付き合ってたら、私まで遅刻しちゃうじゃないのよ」
「は、はい、遥お嬢様、すいません」
マサと呼ばれた童顔の少年は大村正司。この聖ジュリアン学園の一年生で、エスカレーター式のここでは珍しい外部受験での入学生だった。
一方の遥と呼ばれた少女は幼稚園の頃からこの私立学園に通っている。父親は全国に数百の店舗を持つ健康食品専門店の最大手、橋本健康食材流通株式会社の創立者であり社長でもある、いわゆる「お嬢様」だった。
遥は高校三年生で、軽くカールした柔らかそうな髪と勝ち気そうな大きな瞳が印象的な美少女だ。もっとも底意地の悪そうに両端が持ちあがった唇が全体の印象をやや悪くしている点も否めない。
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