夢はあなたのお姫様

5/7
前へ
/26ページ
次へ
遥と翠の姿を見た途端、正司と呼ばれた少年がビクリとその場で硬直した。 「?」 姉妹が何事かと、祖母を見る。 「おほほ、この子はね、おとぎ話なんかに出てくるお姫様が大好きなのよ。だから、本当のお姫様みたいに素敵なお嬢さんたちを見て、びっくりしたようね」 「お…お姫様…?」 「わ、私たちが?」 今度は姉妹がびっくりする番だった。 これまでにも何回か同じようなドレスを着て同じようなパーティーに来たことがあったが、一度たりともそんな言葉をかけてもらったことはない。二人に向けられるのは「成金らしい悪趣味なドレスだこと」などといった大人たちの陰口や、同世代の子供たちの見下すような視線だけだったのだ。 だから遥も翠も、最初はからかわれているのだと思った。そうでなければ、同情されているに違いない。まだ十歳にもなってない少女たちがそう疑ってしまうほどに、周囲の人間は彼女たち家族に冷たかったのだ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

143人が本棚に入れています
本棚に追加