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遥と翠の姿を見た途端、正司と呼ばれた少年がビクリとその場で硬直した。
「?」
姉妹が何事かと、祖母を見る。
「おほほ、この子はね、おとぎ話なんかに出てくるお姫様が大好きなのよ。だから、本当のお姫様みたいに素敵なお嬢さんたちを見て、びっくりしたようね」
「お…お姫様…?」
「わ、私たちが?」
今度は姉妹がびっくりする番だった。
これまでにも何回か同じようなドレスを着て同じようなパーティーに来たことがあったが、一度たりともそんな言葉をかけてもらったことはない。二人に向けられるのは「成金らしい悪趣味なドレスだこと」などといった大人たちの陰口や、同世代の子供たちの見下すような視線だけだったのだ。
だから遥も翠も、最初はからかわれているのだと思った。そうでなければ、同情されているに違いない。まだ十歳にもなってない少女たちがそう疑ってしまうほどに、周囲の人間は彼女たち家族に冷たかったのだ。
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