143人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕、大村正司(おおむらしょうじ)ですっ」
少年が興奮で頬をリンゴのように赤らめながら自己紹介をしてきたので、
「は、橋本遥よ。こっちは妹の」
「橋本翠です。は、はじめまして、正司くん」
姉妹もあわてて名乗る。
「遥ちゃんに翠ちゃんだね?よろしくっ」
そして正司は、これ以上ないくらいの無垢な笑顔になる。見ていた姉妹が思わずどっきりしてしまうような、極上の笑顔だった。
「ねぇねぇおばあちゃん、僕、決めたよ!」
「あら、なにを?」
「僕ね、いつか大きくなったら、遥ちゃんや翠ちゃんみたいな、綺麗なお姫様と結婚するよ!」
遠い夏の日の夜、幼い少年が何の気なしに口にした言葉。
けれどそれは二人の少女の心に深く刻まれ、少年の人生すら巻き込んでいく魔法の言葉となる
そして……八年の日が過ぎた。
最初のコメントを投稿しよう!