104人が本棚に入れています
本棚に追加
「隊長、一応まだ勤務時間中なのですが……よろしいんですか?」
「構わん。どうせ今日は何も起こらんだろう。……それより、やっぱりお前も一杯どうだ? 真面目なのは良い事だが、偶にはハメを外すのも悪くなかろう?」
「お誘いは嬉しいですが、お酒はちょっと苦手なんです、私」
「そういえばそうだったか。思えば、あのクソガキも酒はあまり飲まんかったな。……本当にお前はアイツに似てないな、あれは中々の酒豪だったぞ?」
苦笑いしか返せなかった。二人が家で良く飲み明かしていたのは覚えている。ついでに声がうるさくてあまり寝れなかったのも覚えている。
「いや、だが、似なくて良かったのかも知れんな。……もう、いくつになった?」
「今年で一八になりました」
「一八か。時間が経つのは早いものだな、まったく」
感慨深く呟くと、じっとラヴィの顔を見つめ始めた。睨んでいるようで怖かったのは秘密だ。
「……どこかお前の母親に似てきたな。面影がそっくりだ」
「……母にですか?」
母はラヴィを生んで、物心がつく前に他界してしまった。元から病弱な人だったらしい。
ラヴィの中の母の記憶はあまりに朧気で頼りにならないが、そう言われると何だか嬉しい。
「アイツに勿体無いほどの美人だったなぁ。……本当に何であんなのと結婚したのか分からんほどにな」
そして、隊長の視線は何故かラヴィの体を眺めまわすように、上へ下へと移動して……。
「そういえば、スタイルも良かったけか?」
「セクハラですか? 隊長?」
冗談だと、割と焦った様子で否定した。
「いや、だがな、ワシは本当にいやらしい意味ではなく、お前が母親に似てくれて良かったと思うぞ。酒豪だけは受け継いで欲しかったが、あんな変人になるくらいならよっぽどましだ」
想像するのも怖いと隊長は身を震わせた。ラヴィも思い当たる節があるのか弁明はしなかった。
最初のコメントを投稿しよう!