104人が本棚に入れています
本棚に追加
「き、緊急命令です! 隊長!!」
突然、休憩室に飛び込んできたのは同じ隊に所属する騎士。
額に汗を浮かべ、息を乱しながら不規則な息をついているのを見る限り、それほどの緊急事態があったのだと推測する。
「……どうした? 何があった?」
不謹慎ながら、隊長が興醒めした様子を見せながらもそちらの騎士に意識を向けたことにほっとしていた。
呼吸を整えた騎士がこれから発する言葉が彼女を幸福から絶望へと突き落とすことなど知らずに。
「……はぁ、はぁ。ご、ご報告します! 王城内宝物庫周辺にて事件が発生! 警備をしていた騎士が一名死亡! 犯人は宝物庫から何かを盗み逃走中です!」
「……宝物庫周辺……?」
待って、そこは今日……。
「……クロアが警備している、場所……」
悪寒が全身を這った。クロアがいなくなったら……最悪のケースが頭に浮かぶ。ダメだ。考えたくもない。
得も言えぬ寒気故に震える体をひっそりと抱き締めて、ラヴィは次の言葉を待った。
「それで、状況はどうなっている?」
「は、はい……。現在、宝物庫の警備に当たっていた第十二部隊が総動員で追跡中。……ですが、中々苦戦しているらしく、全部隊に応援要請が回っています」
「苦戦しているだと……? 十二部隊はへなちょこ部隊だが、数だけは売りにしている部隊だ。……複数犯か?」
「い、いえ……! 犯人は一名。……正確に言えば、二名ですが。一名は男、もう一名は……子供らしいです」
「実質一人に巻かれているというわけか……。へっぽこ部隊が悪いのか、それとも相当の手練なのか……」
「あの、すみません」
考え込む隊長を他所にラヴィは騎士に尋ねる。正直、事件の事などどうでもよくなっていた。
何よりも心配なのが、殺害されたと言う人物の事だ。
最初のコメントを投稿しよう!