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彼は《資格持つ者》だった。
それは言わば、彼は生まれながらにして常人を凌駕する戦う力を持っているということだ。
資格なき者からしたら、どんなに欲しくとも手に入ることはありえない、才能。
だが、それがどうした?
戦う? なんで戦わなきゃならない。戦争はとうの五十年前以上も前に終わっている。
なら、何故平和になった今になっても戦わなきゃならないんだ。
疲れて、傷付けて、傷付いて、恨んで、妬んで……それの何が面白い?
戦う意味なんて他人は知らないが、少なくとも彼にはない。
それが贅沢な事なんてのは理解しているけど、無駄な事はしたくなかったのだ。
故に彼は《落ちこぼれ》となった。幼少期から戦う意味を見いだせず、鍛錬を避け、ひたすら趣味に時間を費やしてきたからだ。
指を指され落ちこぼれと呼ばれても、一睨みを効かせ、それ以上は何もしない。
生まれつきの目付きの悪さの所為で怖がって話しかけてくる人もいなければ、自分から関わろうともしなかった。彼は自然な流れで周りから孤立していた。
強さを求めたことなんかない。と言えば嘘になるが、そこまで貪欲に強さを欲したことはない。
今の今まで、一度も。
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