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「……いつも人のいる前で着替えないでって言ってるでしょう?」
「今更だろ? 別にそのぐらいの事でいちいち恥ずかしがるような間柄じゃないだろ。俺達は」
「それでも、よ。……ちょっとぐらいは気にしてよ。私だって……」
――女なんだから。
落胆気味に、声を細めて、そう言うつもりだった。
だけど、出来なかった。
――唇が塞がれていたから。
「………………っ!」
「……んじゃ、俺はお先に。お前も早く来いよ、ラヴィ」
素早く上着だけ羽織る様に肩にかけて、クロアは颯爽と部屋から出て行ってしまった。
パタンと扉を閉じる音が虚しく茫然とした彼女――ラヴィを残した部屋に響く。
(あれ? 今、私……)
ゆっくりと指でまだ自分以外の温もりが残る唇をなぞる。
そして、それが確かに本物の彼の感触だと理解すると、ベッドに倒れ込んだ。
「……しちゃった。クロアと……しちゃった」
とりあえずしばらくの間、自分の中の様々の葛藤と戦いながら、もだえていた。
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