215人が本棚に入れています
本棚に追加
藤枝家の母アリアは不思議な人だった。
アリアが手を振れば、掃除機が一人でに動き、料理が出来上がり、洗濯物が勝手に干されていく。
小さな私(千里)はそれを見ては怖いと泣いていたが、暫くして慣れると興味を持つ様になった。
それが母にしか出来ない事だと周りを見れば理解出来た。
けれど、私なら出来るなどと自惚れていた。
ある時私は母に尋ねた。
『どうやったら出来るようになる?』。
アリアは笑って私の頭を撫でながら、その内出来るようになると言ってくれた。
私は出来る様に頑張った。
それが出来ないと分かったのは数年後。
第二子由鶴が生まれた時だ。
由鶴は弱いながらも、アリアと同じく手を使わず、キャンドルに火を灯した。
父母は当然驚き、そして喜んだ。
逆に私は絶望した。
これは才能だ――。
“人間”がこんな芸当出来る訳がない。
その時私は確信した。
アリアと由鶴は――“魔女”だ。
その後生まれた千草も隆哉も同じ様に不思議な力があった。
兄弟でソレが無いのは私だけ。
私は凄く腐った。
しかしそれも短い間。
理由は余裕が無くなったから。
両親が事故死したからだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!