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木刀事件
走り屋の彼は車にお金を使うのでデート費用がなかった。いつからか自宅の玄関から近い応接間に夜這いしてくるようになり、そこでSEXをしたり、美容師なので髪をカットしてもらったり深夜の密会をしていた。ある日、いつものようにSEXをして彼が果てた瞬間、応接間のドアが開き明かりがつけられた。
「おじいさん!早よ来てごしない!」
殺したいくらい嫌いだった祖母の叫ぶ声。頭に血が上っていくものの、即座にジーンズをはき二人で逃げた。そこに木刀を持った大好きな祖父が今まで見た事のない形相で私達を睨みつけ今にも襲いかかってくるかのような勢いだった。
早朝ながらも緊急事態ということで友達の家に一時非難させてもらった。朝になっておばさんがホットサンドを焼いて黙って持ってきてくれた。友達の何気ない普通の生活が温かく感じ、羨ましかった。
何事もなかったように家に帰り、透明人間になって2階に上がり学校に行く用意をして普段通りに登校した。
学校が終わるとバイトに行くためチャリで校門を出ると彼の車が停まっていた。あんな事があったから彼への気持ちは急速冷凍していた。とにかく必死でチャリをこいでバイト先に向かった。あと3分で店に着く!という場所の脇道に彼の車が停まっていた。怖くて無視して店の中に逃げ込んだ。
家に帰るといないはずの母が居た。祖母が今朝の事を叔母を通して母に連絡したのだ。
母は私達の事を知っていた。
「妻子がいてもお付き合いしてるなら紹介しなさい」
そう言われた通りに母がウェイトレスをしていたレストランに彼と食事に行った。母は招からざる客を見て顔を強ばらせた。そしてお水を運ぶ手は震えていた。
「娘を悲しませる事だけはしないで下さい。よろしくお願いします」
うっすらと涙がたまっていたのは気のせいではないはずだ。 母はやっぱりこんな事になって、と悲しんだ。待ち伏せされて怖かった事を訴えると直ぐに電話張で彼の自宅を兼ねた美容室の番号を探し、電話した。
「お宅のご主人がうちの娘を追いかけ回して困っています!止めさせて下さい!娘はまだ高校生なんですよ!」
奥さんと会話している事が分かると何も悪くない奥さんに対して申し訳ない気持ちになった。
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