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昔から、満月の日には胸が高鳴り言いようのない気持ちが溢れていた。
蛇口を閉め忘れた水のようにとめどなく溢れ留まる事がなく広がってゆく。
その気持ちをなんて呼べばいいだろう?焦燥感?劣等感?ともかくむずがゆく広がる気持ち。
何かを求めるように、そう。
まるで恋焦がれるように何かを求める気持ち。
そして、「それ」、は突然やってきた。
満月の日になぜか私は迷わずそこに足が向かった。
そこは公園で、ひらひらと、どこからか花びらが舞っている。
赤い、赤い、
ひらり、はらり、
一筋の風が吹くとそこには最初からあたかもいたように赤い色をしたマントをすっぽりと被っていたヒトが居た。
赤い花びらがひらひらひらひら鬱陶しくなるくらいにそのヒトの周り舞っている。
違う。花びらではなくて赤いマントがひらひらくるくる舞っている。
それはまるでそう、昔聞いた童話の中の赤頭巾のような。
赤いヒトは緋色の瞳が怪しく光を放ち、只、一言。
「戦いの装束を。」
目の前に差し出された同じような赤いマントを私は迷う事なく、手にした。
赤い、赤い、まるで赤頭巾のように。
そして私は、赤頭巾になった。
東京真夜中零時零分満月が赤く見えた。
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