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――拝啓。
兄様、私は見ました。
ある痛みを対価に見ました。
それはそれは清楚を思わせる純白でした。
でも、兄様。
残念なことに全然嬉しくもなければ、心が踊るなんて事がまったくないのです。
何故でしょうか?
やはり相手が険悪する者だからでしょうか?
痛みがその喜びを著しく上回っているからでしょうか?
それとも、私が……
ごめんなさい兄様それ以上言ってしまったらそれが事実だと認めることになります。
いけないですわね、こんなに弱気になっては。
では本日はこのへんで、お元気で。
追伸、本日はお日がらも善く洗濯物がよく乾きそうです。
敬具。
「痛いじゃないかーー! 馬鹿野郎ー、ショックで頭の中で兄貴におかしな文を詠んでしまったじゃないか」
俺は痛む頬を摩りながらトリップ状態から復帰したそうそうに文句を垂れる。
腫れてるせいかいつにも増して頬がプニプニ柔らかい。
「そんなの知らないわよ! それにいきなり叫んだあんたが悪いんじゃない! びっくりしちゃったわよ」
「普通びっくりしただけで回し蹴りを食らわすか? おかしい、確実におかしい!」
いつまでも床に不格好に倒れ込んでるのも嫌なので立ち上がる。
「あんた縮んだ?」
「はぁ? 縮んだじゃなくて、無くなったんだ!」
俺は宮田香織を見上げながら怒鳴る。
無いモノが縮むわけなかろうにこの馬鹿たれが。
「違う違う、背、身長の話し」
宮田香織は俺の頭の上で手を平にして横に振っている。
それは俺の身長を示してるらしいが、その手は宮田香織の首の少し上ぐらいの位置にある。
俺の身長は確か171センチ、日本男子の平均より少し下ぐらいか……?
「宮田さんてデカイのな。そして、それは俺にたいする皮肉か? 自慢か?」
180は軽く越えてるぞ、この女。
化け物だ! こいつの身長はかの有名巨人女性?歌手なんて目じゃない。
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