ある朝の出来事でした

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「きゃ――」  叫びそうだった宮田香織の口を塞ぐ。 そして、開きっぱないしのカーテンも閉じる。  なんか、俺危ないなぁ、人間的に。 「んぐっ、んむ、むー、んー」  宮田香織は何か言いたげに口をむぐむぐして、暴れて抵抗している。 「少し静かににしてくれないか? ただちょっと聞きたいことがあるんだ?」  宮田香織の首筋にさっきとっさに抜き取った体温計を当てる。 ひんやりしてるから刃物かなんかだと思ってくれれば幸いだ。  彼女は思惑どおり大人しくなって、コクりと頷いた。 そのとき、涙目だったのが良心にずきっと突き刺さる。 「取りあえず、宮田さんは、俺のこと嫌いだな? 正直に答えてくれ」  俺は彼女の口から手を離して喋れるようにする。 「当たり前でしょ! こんなことされて好きになるわけないでしょ変態っ!」  首に刃物が当てられてると思ってるはずなのに、宮田香織は妙に強気だった。 胆が据わってるつーか。まぁ正直な気持ちには変わりない。 「はぁ、意外と傷つくなぁ」  彼女の発言にはなかなか威力がある。優位に立ってるはずの俺が押されてしまうし。  それに心に刺さった釘をトンカチで思いきり打ち付けられた気分だ。 まぁ、上々だね。これで心置きなく嫌われる事ができる。 「んじゃ、とことん嫌ってもらおうか、今からする事でな。くふふ……」 「ひっ」  初めから嫌われてりゃ、たいした変化はないだろう。『嫌い』が『ものすごく嫌い』になる程度の変化だ。  宮田香織の顔色が少し青ざめたように見えた。  気の強い彼女でも所詮人間というわけだ、何をされるか想像でもしたのか小刻みに体が震えている。
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