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「…………。」
数分後、頭にかけられた味噌汁をポタポタと流しながら、アクルは呆然と母親が去った席を眺めていた。
朝食からまだ、湯気が出ている。
自虐的な笑みを浮かべて。 アクルは立ち上がり、うっすら寒い中水道の水で、頭を軽く洗う。
朝食を片付けて、布団以外に私物がまったく無い自室に行き、やはり汚れている制服に袖を通した。
母親の部屋の前に立ち、行って来ますと一言だけ告げる。 返事は無い。
ゆっくりと家のドアをあけ、透き通る様な青空をアクルは見上げた。
平和を象徴する様な青空と、平和の象徴と言われるハトを見て、アクルは口許にだけ僅かな笑みを浮かべた。
そして、自分の学校に向かい歩き出すアクル。
すれちがう人々の、怪訝そうに見る視線に気付かないふりをしながら……。
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