プロローグ

10/13
166人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
気が付くともう日が暮れる時間であった。 少女は相変わらずスゥスゥと寝息を立てて俺の胸の中で眠っている。 「…プロジェクトX…井原豪三郎…宮沢哲哉…」 先程のニュースの影響かやけに名前が頭の中で飛び交う。 研究所で一人を除き全員が死亡。 その一人は行方不明。 明らかに奇妙なニュースだ。 彼女は井原豪三郎とやらの写真が出た時にやたらに唸っていた。 …やはり…何か関係があるのか…? ピンポーン! 「!?」 家のチャイムが鳴ったのはその時だった。 「…ど、どちら様ですか?」 …返事はない。 「…」 不思議だ。 いつもとは違う。心拍数が高まる。 イタズラで有って欲しい。 あのドアの向こうに誰がいるのか…頭を不安や恐怖が支配する。 そんな中。 「…もし聞こえているなら聞いてくれ…俺は宮沢哲哉と言う者だ…」 明らかにドアの向こうからの声だった。 宮沢…哲哉…!? 頭の中のモヤモヤが溶けるような感覚に襲われる。 まさかこの犬耳少女は…? 「…開けてくれたらその犬…いや犬耳の少女についての事を話す」 …!? コイツが…犬耳少女の事を…? 話が急展開だ、落ち着け、俺。 「っ…お前を信用したい、証拠は」 俺は冷静を装いドアの向こうへと言い放つ。 「悪いが何もないな…何をすれば良い?」 相手は意外ながらも下手に出てきた。 本当はのどから手がでる程彼女の情報が欲しいのだが。 「…お前の個人情報や状況、そして何故俺の家の事を知っているのかの説明からだ」 冷や汗が背中を辿る。 扉の向こうからはため息と共に声が聞こえてきた。 「…宮沢哲哉、年は24。プロジェクトXに所属していた科学者の端くれだ。お前の家にいる犬耳少女については後で詳しく話したいと思っている。場所が解ったのは…彼女の背中の首筋に付いている発信器のおかげだ」 宮沢哲哉を名乗る声はスラスラと言った。 「…目的は?」 「お前にその少女についての話をしたい、安心してくれ、危害を加えるつもりも迷惑をかけるつもりもない、なんなら電話番号を渡してくれればそれでも構わない」 「いや…いま開ける」 俺はそう言うとゆっくりと鍵を開けた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!