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扉を開けると白衣にメガネをかけた背の高い青年がいた。
「…入れよ」
俺はそう促した。
「ああ…」
という小さな返事を聞いた後に。
俺は狭い部屋ながらも宮沢哲哉を座らせ、向かいに座り込んだ。
「…」
哲哉は俺には目もくれず犬耳少女を見つめている。
「あ、俺の名前は坂田優介ってんだ」
気が付けばそう口走っていた。
「…ああ」
再び沈黙。彼は相変わらず犬耳少女を見据えて話さない。
「…なあ宮沢さん?」
「哲哉で良い、何だ?」
何だ?じゃねえよ…説明するって言っただろ。
「この少女って…」
「ああ、そうだった。CRー2。それが彼女の名前だ」
哲哉はここで俺に目を向けた。
「CRー2…?」
「コードネームだ。はっきり言わせてもらうと実験台として与えられた名前だな」
「な…!?」
この少女を使って実験…だと?
「まあ落ち着け、俺達は人体の細胞の研究を行っていた。俺たちが行ったのは赤ん坊だった彼女に犬の細胞を入れ込み育てあげる…という実験をな」
犬耳少女へと目をやる。彼女は俺の近くで歩き回っていたが、俺と目が合うと嬉しそうに小さく吠えた。
「つまりこの少女は犬の遺伝子が入った…あんたらの実験台なんだな?」
「ああ」
哲哉は平然と良い放った。
…白衣見たときからそんな感じはしてたけどまさかマジでこんな実験をしてんのかよ…
「ちなみに今のところその少女の知能や精神に異常はない」
「はぁ?ちょっと待てよ哲哉。この子わん!としか話さないんだけど?」
俺の問いに哲哉は?マークを浮かべる。
「…当たり前だ、脳に障害は無くてもデータが犬の知能なんだからな。つまり学習をしていないのに話せる訳が無いだろう。」
「っ…なるほど…」
「だが今でこそ人間界の言葉を学ばせること自体は容易だ。彼女の脳は今の年齢からしてかなりの吸収力を持っている」
俺は変に納得しながら哲哉を見据えた。
「だがコイツはもう犬として生きているんだ」
「…じゃあこの子…どーすんだよ?博士とやらは死んだんだろ?ニュースになってたぞ」
「…ああ、そのことなんだが…」
哲哉は俺の肩を掴んだ。
「お前に守ってもらいたい」
「は?…俺が?」
変な顔をしていたのが自分でも解った。
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