プロローグ

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さてと。 この犬耳少女についてもう一度述べておくと、 まず茶色い犬の様な耳が二つ、頭から突き出ている。 そして頭から肩までなめらかに伸びる蒼いストレートヘア。 純粋な瞳も頷ける。 そしてなかなかスレンダーな身体の最後に茶色いシッポがある。 フサフサではなくビロンと。 「わん!」 …そして「わん」と吠えて「くぅん」と鳴く。 個人的には多分わん!が肯定的な返事でくぅんが心地よい時に出す反応だと思っている。 やれやれ。 そんな彼女、犬耳少女は今テレビを見ている。 舌を出したり喘いだりしながら。 「次のニュースです…」 あれ?ニュース見てるの? 「《プロジェクトX》と呼ばれる科学班の研究室に大量の…」 「わん!わん!わん!」 そのニュースを見た途端犬耳少女は急に身構えて何度か吠えた。 端から見ていても解るほどに彼女が怒っていた。 ニュースキャスター、人間を見て怒っているのかとも思ったが違う。 現場中継になった後も、ずっとグルルルと唸っていた。 「…どうしたんだ?」 「がぅ……くぅん…」 甘えるように顔を近づけてくる。 最初見たときこそなんだコイツと考えていたが。 なんだか守ってやらなくちゃならないのか、と言う気持ちに駆られた。 それ程までに彼女は怒り、怯えていた。 「…プロジェクト…X…?」 そう、とある研究チームが全員死んでいたと言う奇っ怪なニュースだった。 しかも死因は6人の中で5人が銃殺、1人は全身を裂かれた様な跡が合ったと言う。 そして研究所で唯一発見されていない研究員「宮沢哲哉」の行方を追っているとか。 「わん!わん!」 そしてその宮沢哲哉の写真が写されると、犬耳少女は首を傾げながらくぅんと鳴いた。 コイツはいいのか? しかし死んだプロジェクトXのリーダーであろう「井原豪三郎」と言う髭もじゃの博士の写真が移った時またも彼女は怒りをあらわにして吠えた。 …なんか恨みでもあるのかねぇ? 気がつけば俺は彼女の耳がついた頭を撫でていた。 「くぅん♪」 犬耳少女は唸り、俺の頬を舐めて、俺の胸に寄りかかる。 気づけば彼女はすぅすぅと眠っていた。
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