天然少年少女

7/24
前へ
/27ページ
次へ
数分後、教室に彼が入りあたしの横を通る。その時に立ち止まって必ずこう言うんだ。 「おはよう、朝子」 幼なじみの特権、それは名前を呼んで挨拶してもらえる。 普通なら王子に挨拶されたと大喜びの場面だが、あたしは無表情で社交辞令丸出しの返事をした。 「内田くん、おはよう」 ただ、特権と言ってもそれだけだ。昔からの名残程度の関係。 そこから話が広がる訳でもなく、彼は一番後ろの席のあたしより四つ前の席に腰を落とした。 あたしの席からは教室がよく見渡せる。学校という箱からクラスという名の箱に変わっても、背の高い彼の栗色の頭はよく目立った。 そしてあたしは心の中でもう一度挨拶をするんだ。 てんちゃんおはよう。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

462人が本棚に入れています
本棚に追加