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数分後、教室に彼が入りあたしの横を通る。その時に立ち止まって必ずこう言うんだ。
「おはよう、朝子」
幼なじみの特権、それは名前を呼んで挨拶してもらえる。
普通なら王子に挨拶されたと大喜びの場面だが、あたしは無表情で社交辞令丸出しの返事をした。
「内田くん、おはよう」
ただ、特権と言ってもそれだけだ。昔からの名残程度の関係。
そこから話が広がる訳でもなく、彼は一番後ろの席のあたしより四つ前の席に腰を落とした。
あたしの席からは教室がよく見渡せる。学校という箱からクラスという名の箱に変わっても、背の高い彼の栗色の頭はよく目立った。
そしてあたしは心の中でもう一度挨拶をするんだ。
てんちゃんおはよう。
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