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・・・どうしようか
家で一人、これからの見えない道を探していた。企業倒産、大幅解雇、物価高騰・・今日本は就職難。選ばなければ、雇ってくれる場所があるかもしれないが、長い間料理の世界を見てきた豪にとって、その方面が一番合っていると自己分析していた。恵まれた人間関係が次も在るとは限らないが、何も出来ない自分にとってはこの世界しか今は無い・・。ようやく気持ちが入れ変わってきた。嘆いてばかりではいられない、とにかく今は次の仕事に向けて頑張らなければ。
真夏の太陽はさんさんと輝き、その光は容赦なく人々を照り付けている。行き交う車にも、水辺で遊んでいる動物にも。地球全体がその強大な力を浴び、発汗や日焼け、度が過ぎて熱中症などの被害を被ったりもしている。夏は嫌いじゃない。だが豪は汗だくのシャツが気持ち悪く、自転車をこぐ体力も奪われていった。普段の行動範囲外である遠出。目指す場所は職業安定所。家から10キロの距離をひたすら進んでいった。こんな時にバイクや車があればと思う。借金返済が終わるまでの辛抱だ。電車やバスを使う金があれば、飯代に回す。
世界規模の不景気とはよく言ったもので、辿り着いた安定所では、人がごった返していた。これほど仕事が無いという事は、つまりは皆お金が無いのだ。発展し、昔では考えられない世界の現状。生活の基盤そのものが、高い技術力で作られた。そのネットの世界では見たい物が閲覧でき、聞きたい物を保存し、買いたい物を無償で手に入れたりと極めて便利な機能を有している。ただそれによって奪われた商売は果てなく存在する。CD、映画、新聞、雑誌、数えれば切りがない。どれだけの利益がネットによって阻害されたか・・。またその影響で、世界の人々は財布を閉めた。金の流通が減少すれば、それは貧困者に回る金も回っては来ない。豪はそれが自らの持論でしかないと考え、ネット批判を大衆が聞き入れるとは思わなかった。雇用形態改正による派遣就業者の大増加、米国を代表とする海外の国の不況による国際関与、様々な要因がこの失業者達を作りあげた・・。豪は受付の行列に並びながら思った。原因は重要では無い・・。これから先、国民が望む職種に就きやすい環境を作っていく方が大事だと。また料理をしたいと。
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