歪んだ親子の絆

12/13
前へ
/72ページ
次へ
「…狼漣だよな。どうして狼の 姿に?」  と首を傾げ尋ねて来ていたが、狼姿の時の私は、人語を話す事は出来ず、 「ぁ その姿じゃ、話せないか」  と達哉が、それを悟ってか言ってくれていた。私はそれが少し嬉しく思い 「わぉぉ…ん」  と甲高く遠吠えをしていた。すると私の目の前に光の粒子が集まり、人の形になると 「達哉、ごめん。こんな姿で。 消耗した体力を回復するには 、この姿が都合がいいの。」  と私の声で、光から声が発しられていた。達哉はそれに多少驚きながら 「そうか、でもどうして回復が 必要なんだ?」  と首を傾げ、聞いていた。私は光を通して 「ちょっとアリシアが、暴走を 起こしてね。それを止める為 に人狼の血が必要だったのよ 。私の血も、人狼と同じだか らね。」  と簡単に説明すると、達哉は心配そうに 「アリシアが?大丈夫なのか? 」  と聞いて来たので、私は 「えぇ、命には別状はないわ。 ただ左腕が後遺症で、動かな くなったけど。だから達哉も アリシアを支えてあげてね。 」  と言うと、達哉は微笑み 「あぁ、わかった。でも安心し たよ。狼漣が皆に心を開いて くれて。」  言って来ていた。私は俯き 「くぅー…ん」  と鳴き 「別にそう言う訳じゃないよ。 ただ、私の前で知人が亡くな るのを見るのは嫌だっただけ 。」  と光を通じて話すと、達哉は微笑み 「そう感じるって事は、やっぱ り心を開いてるんだよ。開い てなければ、アリシアがどう なっても気にならないし、ア リシアの為に、メル寮長に談 合しようとしないし、なによ り自分の血を与えたりしない だろう。俺は数多く、そう人 達を見て来たからね。わかる よ。」  と言って来ていた。私はそれを聞いて、心の中で認められなかった事がスーと解消出来たような気がした。 「…そうかもしれないわね。達 哉、ありがとう。少し楽にな ったよ。」  と私は礼を言うと、達哉は微笑み 「別に礼を言われるような事し てないよ。っと、ずっとその 状態だと休まらないだろ。俺 はもう失礼するから、休むと いいよ。」  と言ってくれていた。正直辛かった私は彼の言葉に甘え、光を分散させると、言葉の変わりに、達哉の周りを一周し、 「わん!」  と吠えていた。 達哉はそれを見て 「じゃあ また明日。」  と微笑み言うと、その場を後にしていた。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加