愛しき人との約束

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 それから翌日、私は狼の姿のままの睡眠から覚めていた。  起きると同時に、私の体は、光に包まれ、狼の姿から、人の姿に戻り、んーと大きく伸びをしていた。  するとそこに、メルが来ていた。メルは、先客がいる事に驚いた様子で、 「狼漣、こんな所にどうしたの ?」  と首を傾げ、聞いて来たので、私は 「いや、昨日かなり血液を消耗 していたから、狼の姿で休ん でいたのよ。今消耗した分の 魔力が回復出来たから 元に戻 った所なのよ。」  と説明すると、メルは昨晩の事を思い出し、少し申し訳なさそうに 「そぅ。でも自分の部屋がある んだから、ここで休まなくて も。」  と苦笑しながら言って来たので、私は 「そうだけどね。自分の部屋よ りも、野外の方が、空気中の マナ濃度が高いのよ。魔力回 復させるにはマナを大量に、 体に取り込む必要があったか らさ。だからここで休んでた のよ。でも メルはどうしてこ こに?」  と首を傾げ尋ねると、メルは私の後ろにあった石碑を指差すと、 「そこに、私が愛した人、ニー ルが眠っているの。私はニー ルと毎朝、話してるのよ。ま ぁ、私からの一方通行だけど ね。」  と少し寂しそうな笑いを浮かべ、言って来ていた。私は指差された石碑を見ると、石碑には ″愛しき人、ニール=レストアこ こに眠る″  と印されていた。私はそれを見て 「ニール=レストアってアリシア の?」  と首を傾げ聞くと、メルは頷き 「えぇ、父親よ。アリシアが産 まれたその日に亡くなったか ら、アリシアは会った事も、 顔すらも知らないけどね。」  と寂しそうに話していた。私は 「顔も知らないって、写真とか ないの?」  と少し驚きながら聞くと、メルは苦笑すると 「ないわ。当時、エルフと人間 はまだ敵同士だったの。私と ニールはそんな中で、人間を 裏切り、私たちについて戦い 、戦いの間での付き合いだっ たから、写真を撮る暇もなか ったし、デートらしいデート も出来なかった。」  と話してくれていた。私は墓を見つめると 「ねぇ、もう少し。そのニール さんの事を、教えてもらえな いかしら。メルが、アリシア を人間にこだわった理由も、 知りたいし 墓がここにある理 由も知りたいしさ。」
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