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と言うと、メルは少し考えたのち、そして語り始めた。
『私とニールの出会いは、まさに戦争の真っ只中だったわ。
ニールが自分の所属の部隊からはぐれ、かつ、流れ弾にやられ、瀕死の状態でいたのを、たまたま偵察に出ていたセレスと私で見つけたの。
偵察エリアに敵である人間がいた事に、私たちは警戒したけど、すぐにそれは解けた。なぜかって、彼は敵であるはずの私たちを見て、武器を取ろうとしなかった。普通ならどんなに瀕死の状態であろうとも、敵と接遇してしまったら、自分の身を守る為に、武器を取るというのに、彼はしなかった。だから、私はセレスを引かせ、自分も武器をしまってから、彼の傷を手当てした。その時、彼もセレスも突然の私の行動に驚いていたわ。でも正直驚いたのは、私だった。無意識に彼の手当てをしてしまったのだ。
私の手当てを受けて、彼はどうにか自力で歩けるまで、回復した。彼は、大変感謝の言葉をくれ、この借りはいつか必ず返すと残し、自軍に戻っていった。
その後、私はセレスから責められた。いくら瀕死であっただろうが敵を助けるなんてって。
そしてそれから数週間が過ぎ、人間の部隊が、エルフの集落を奇襲した。いきなりの奇襲に、私もセレスに窮地に陥った。今にも討たれると覚悟を決めた時、私を討とうとした兵士が突然倒れ、周囲にいた敵も次々と倒れていた。 そして周囲に敵がいなくなったと同時に、姿を見せたのが、前に助けたニールだった。
突然の登場に私は、驚いた。まさか本当に、借りを返しにくるとは思いもしなかったから。セレスや、他の味方軍は、ニールを警戒し、ニールが隙を見せるのを待ち構えていた。
私はそれを肌で悟ると、ニールの側に寄り、セレスたちに向き直ると、ニールは味方だと訴えた。だが、セレスや他の味方軍は、人間であるニールを信用しようとしなかった。
私はそれに怒りを覚えた。どうして分かってくれないのと。でもどうして、ニールにそのような感情を抱くのか、自分でもわからなかった。解らないまま、私は彼を守るために、セレスたちに槍を向けた。
セレスは私の気持ちを理解してくれた。それからニールは、私たちと共に戦った。
ニールにとって、人間は元味方のはずなのに、なんの躊躇いもなく切り捨てた。
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