愛しき人との約束

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  最後に、先立つ事になりご  めんな。   そして、これまでありがと  う。  ニール=レストア」  って書かれてた…。それを読んで、私はいつか彼が話してくれた事を思い出した。 『僕は今の世界を悲しく思うよ 。神は、折角、僕たち異種族 が共存できる世界を、作って くれたのに。僕たちは、身勝 手に自然を壊し、戦争で大気 と、異種族間の絆を壊して。 永劫の理想郷という名前に相 応しくなくない世界になって いる事に。  でも、一つの光が見えた。そ れは僕と、メレスだ。人間で ある僕と、エルフであるメレ スの種族の違う二人に、愛が 生まれた。異種族の絆や愛は 復活出来る。だから決めたん だ。いつか戦争が終わった時 、僕は異種族同士が仲良く過 ごせる場所を作ろうってさ。 それが今の僕の夢だよ。』  と追放された初夜に、そう話してくれた。それを思い出して、私は決めたの。ニールが残してくれたここで、事情を持って自分の居場所を失った者たちの憩いの場所にしようって。  そして、ここにニールの墓を立てて、約束したの。  ここを種族関係なく過ごせる楽園にする事を。』  と目に涙を浮かべながら、話してくれていた。私はそれを聞いて、メルが、ニールに執着していた理由がなんとなくわかった。 「素敵な話ですね。楽園か、多 分なりつつあるんじゃないか な。ここには、エルフのメル 、人間である達哉、妖精であ るミント、ハーフエルフであ るアリシアにプレセア、そし てエルフと人狼のハーフの私 。異種族が共に暮らせている んだから。」  と微笑み言うと、メルも同じように微笑むと 「えぇ、でもまだよ。世界に暮 らす人たちは、まだここの事 を知らない。誰も知らない理 想郷は理想郷にあらず。誰も が理想と思える場所こそ理想 郷なんだから。だからまだま だよ。でもありがとう。そう 言ってくれて、少しすっきり したわ。」  と礼を言って来ていた。私は少し照れながら 「別にたいした事してないわよ 。ま これからもよろしくね。 私の居場所はここしかないん だから。」  と微笑み言うと、 それを聞いたメルは驚いた様子で、私の方を見て、そしてすぐに微笑むと 「そうね。 こちらこそ よろし くね、狼漣。」  と言い、私は「ええ。」と返事をし、それから数時間程、世間話をし、それぞれの部屋に戻っていたのだった。
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