ポインセチア

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「若いとは、羨(うらや)ましいことじゃのう。」 六郎おじいさんは、 お茶を入れている私の背中に投げかけた。 大ちゃんと離れて、 そのまま緑丘老人ホームにボランティアに来てしまったためか、 ホームの利用者である80歳の六郎という名のおじいさんが心配して声をかけてくれた。 「何かつらいことでもあったのか?」 その一言で、 私は身に着けた殻(から)が一気に外れて、 泣き出してしまった。 さんざん泣いた私を 六郎さんは何も言わずに、 ただ見ていてくれた。 それが私は嬉しかった。 しだいに涙が止まっていくと、私はさっきの大ちゃんとのやり取りを話した。 そして今、落ち着いて お礼にお茶を入れている。 六郎さんは、再び私の背中に語りかける。 「あんたはいい娘(こ)だ。 自分をそんなに責めるな。」 「でもやっぱり…私が悪いの。 今でも十分幸せなのに、彼に求めすぎてしまってる。」 、
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