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私は半年前、
毎日が幸せだった。
本当に心から好きと思える人と
毎日会うことができたから。
私達はいつものように二人で並んで下校していた。
内心、この時間が私は一番大切で幸せだった。
その日は進路相談があって、
そのことについて話しながら帰った。
私は福祉の専門学校がすでに決まっていて毎週、ボランティアで老人ホームに行っていた。
けれど、大ちゃんはまだ進路は決まっていなかった。
彼は決められないでいた。
そんな大ちゃんに私は言う。
「大ちゃんは偉いよ。妥協を絶対にしようとしないし、自分に正直に生きようとしてる。だから進路を決められないだけなんだよ。」
大ちゃんの視線が私に向けられる。
その目がとても真剣でまっすぐだったから、私は胸の鼓動(こどう)を誤魔化(ごまか)すように続ける。
「…私はこんなだから誰かの役にたって自分の価値を見つけようとしたり、作りだそうとしてる。
おじいちゃんやおばあちゃんは本当に大好き。
だけどオムツ交換だったり食事のお手伝いだったりをしていて、嫌がられたり怒られたりした時、『どうしてあなたのためにしてあげてるのに協力してくれないの』って恩着せがましく思ったりする。
結局は、誰かの役にたちたいっていう気持ちをご老人を使って自己満足しているだけ。
そんな理由で進路を決めている私より、自分が納得いくまで道は決めないって、やれそうでやれないことをしている大ちゃんが羨(うらや)ましいな。」
それはまぎれもなく私の本音だった。
こんなこと言えるのは大ちゃんしかいない。
彼以外なら『引かれる』んじゃないかって想うことも不思議と大ちゃんへなら言える。
その理由は、大ちゃんなら理解してくれるって信じてるから。
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