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僕はこっそり部屋を抜け出した。
家の中は、みんな寝静まってしまってかなり静かだ。
なるべく音を立てないように気をつけながら、僕は約束の場所へ向かった。
鍵は奏者が開けてくれている。研究所は夜中誰もいないので、見られる心配はない。
僕はそっとドアを開けた。
「永遠…?」
呼びかけてみると、かたん、と物音。
少しだけ開いていた、通路脇のドアから、奏者が顔を出した。
「こっち」
手招きされたほうへ急ぐ。
無事に応接室にたどり着き、僕はホッと胸を撫で下ろした。
「で、話ってのは?」
革張りのソファに腰を下ろして、奏者が尋ねる。
僕はその向かい側に座って、躊躇いながらも口を開いた。
「その…絶対零度のことなんだけど」
「四季の?あいつがどうした」
どう言ったらいいんだろう。
迷いながら、僕はそれを口にした。
「…永遠は絶対零度と絶対悪を一緒にいさせてあげたいんだよね。だから二人のそばにいるんだよね」
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