おかえり

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「ただいま」 暗い部屋にしんと響く自分の声。昔は毎日独りだったのに、いつから1人でいて、この部屋が広いと感じはじめたのだろう。 暖かい季節なのに、待つ人のいないこの部屋は冬のそれのようにひんやりとしている。 任務をこなし、疲れた身体は栄養補給を望んでいるが、何かを口にする気になれずにボスっと白いシーツの中にダイブする。着替えるのも億劫だ。 1人の家に帰るようになり、何度月が空にのぼっただろうか。 このまま目を閉じたい。今では殆ど残っていないあいつの香りを探すように、シーツに顔を埋める。 同じ暗部なのに、どうしてこうもすれ違うのだろう。あいつは不安にならないのか、会いたくないのか。聞かなければわからないことばかりが頭を巡る。 カタン。 気がついたら眠っていた。 小さな物音にはっとして、閉じようとする瞼を押し上げる。 最初に目に入ったのは、金色の自分の髪が映るあいつの黒い瞳。掛け布団をかけずに眠ってしまった自分に、布団をかけようとしていたのだろう。 自分に向かって伸ばされた両腕をひっぱる。上体を崩した自分よりも一回り大きな身体を力いっぱい抱きしめる。
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