二 天才と馬鹿の差

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「オール・キャントラーだ。君のことは風の噂で耳にしている。能力は異常身体能力。動体視力もおかしいみたいで、銃弾ぐらいなら避けられる」 「彼は世に言う天才児だったの。今はこの機関で二番目に偉い人なんだよ」 本庄が付け加える。ひえー、そんな偉大な人なのか。 オールは俺が差し出した手をがっちり握った。 その瞬間、体が水に浮いた時のようにふっと軽くなる。 「引き継いだな。今日一日それで過ごせよ。便利だぜ」 ムーヴがニヤニヤしながら俺を見る。 あ、そっか。俺、今オールの力を持ってるんだ。 「これだけで? ちょっと試してみようか」 本庄は能力を確認するため、実験用具から何かを取り出す。 「じゃあ今から果物ナイフ投げるから、上手いことキャッチしてね」 「ナイフって、おい馬鹿やろ……待て待て! ちょ、危な……!」 本庄は力いっぱい(のように見えた)俺の頭を狙って果物ナイフを投げつけた。 俺は反射的に頭を背け……速い! 頭を動かす尋常じゃないスピードに驚愕し、果物ナイフに目を向ける。 見える! 「おお」 ムーヴの静かな感嘆の声が聞こえた。 「能力証明……だね。他にもやってみよう!」 俺は手に持った果物ナイフを壁に向かって投げると、信じられないスピードで飛んでいき深々と突き刺さった。
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