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「おい田中…って何泣いてんだよ…」
屋上についたからとっとと用件を済ませようと振り返れば、さっきまで目を潤ませていた田中は涙腺壊れたかってくらい泣いていた。
「ずびばぜっ…」
俺まだ何もしてないんだけど…
あまりにも情けない泣き顔につい笑ってしまいそうになって一度息を吐いた。
「いいけどさ…田中お前俺と付き合えよ」
そう言ったのに田中はどこにと聞いてきた。
アホか…。
俺が恋人としてと告げれば田中はキョトンとした後に明らかに戸惑った表情を浮かべた。
さっきからコイツ…クルクルと表情が変わるな…
黙ってしまった田中に、有無を言わせない言葉で脅しをかける。すると田中は気持ち良いほどの大声で「はい!付き合います!」と叫んだ…。
見た目は平凡。けど面白いやつ。
それが田中の…蘭の第一印象。
次の日、田中と家が近い事が分かった俺は待ち合わせて一緒に登校した。終始俯きかげんで、昨日コロコロと変わった表情は伺えない。
登校したらしたで、その様子を見ていた唯が笑いながら近づいてきた。
「ねーあれが田中!?超外れ!アハハ!」
豪快に笑う唯に舌打ちをすれば無視をして席につく。唯は俺の肩へと腕を回せばわざとらしく猫なで声を出して顔を覗きこんできた。
「外れだしどーせすぐ振るんでしょ?」
「ああ」
「酷い男ー」
「あ?お前がコクれっつったんだろ!俺は元々男なんて興味ねーんだよ!」
「田中君はー?何でOKって…怖くてOKしちゃったのかなー?」
「だろうな。だから早く別れてやったほうがあいつも嬉しいだろうよ」
「アハハーとんだとばっちりだねぇ。いつ振るの?」
「昼」
ふーんと楽しげに笑う唯を無視して携帯を弄り始めた。
ああ面倒くさい…こんな事は直ぐに終わらせよう…
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