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押し黙ったままの僕の様子を肯定と受け取ったのか、太一は一度ため息をついてどこか困った様に僕を見た。
「お前は喧嘩するようなタイプに見えないけどな…何があったんだよ」
「ぼ…僕だって喧嘩くらい…するよ…」
なんて、一方的に殴られてたけど…
いつもの嫌がらせ、今日はちょっと違ったんだ。
呼び出してきたのはいつもの可愛いコ達とは違う、むしろ太一のお仲間じゃないかって感じの不良だった…金髪で怖そうな…
『太一さんがオメェみてえなのといると威厳が下がんだよ。地味男は地味男らしく大人しくしてりゃあいいんだっつーの…いつまでも太一さんにつきまとってんじゃねーぞ』
ねー…どうしてみんな僕の話聞かないかな…
皆大事な事を勘違いしてるよ、つきまとったのは僕じゃないんだって…
本人に確認してから言いに来ようよ…
でも……
『黙ってんじゃねーよ、分かったのか?!』
『………だ…』
『…あ?』
『ぃゃ…だ…っぅ!!』
勇気を振り絞った言葉は呆気なく右ストレートで打ち消された。
よろけて尻餅をつくと、口の中に鉄の味が広がる。
『嫌だ!そんな事っ太一に言えばいいじゃないか!』
『てめっオイ待て!』
尻餅をついた体勢から大声で叫びながら脱兎の如く逃げ出した。
殴られても、怖くても、僕は太一から離れるなんてもうできないんだ…
あの優しさがホントか嘘かなんて分からない…あの告白自体太一の本意でされたものじゃないんだろうから…
それでも、僕は太一の嘘に捕まってしまった…あの優しさを自分から手放すなんて出来ないよ…
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