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「で?どこのどいつと喧嘩したんだよ」
「いっいわないよ!」
正直にいえば「知らないよ」なんだけど…
「あ?なんでだよ、俺が一発殴り込んでやるって」
「ダメ!ぼっ僕の喧嘩に太一が乗り込んだらフェアじゃないじゃないか!」
答えない僕に眉根を寄せた太一が詰めよってきたけど、僕は必死に首を横へと振った。
今回の件も今までの件も太一が直接出た方が手っ取り早いんだろう…
太一がどういうつもりで僕の傍に居るのかは分からない、けど…こんな事で太一の手を借りたりしたら、それこそホントに太一の腰巾着みたいになっちゃいそうだし…。
『あいつは太一が居なきゃ何もできないやつ』なんて、嘘の恋人だったとしてもそんなレッテルを貼られたくない。太一の恋人でいる以上は少しでも釣り合っていられるようにしたいし……
「でもなぁ…俺のもんに手ぇ出された時点で俺にも喧嘩売ってるっつー事になんだろ?」
不適に笑って言ってのける太一の言葉に答えられずに俯いた。
ねぇ太一、君はいったいいつまで僕の傍に居てくれる?
太一の告白が無理矢理だったのは知ってるよ?
付き合うだけならきっと太一はもう僕を切ってるよね…
太一が離れて行くときは、僕が君を好きだと告げた時じゃないかって…
だから好きだと告げていない今、太一はまだ傍にいるし、僕を落とすために優しくしてくれてるんじゃないかって…
そんな事を考えてしまう…だから
「違うのかよ?」
不満げにそう聞き返す太一に、僕は曖昧に笑って見せた。ここで僕は君のものだと頷いてしまったら、終わってしまいそうで…
その瞬間、太一がひどく傷ついたように眉尻を下げて視線を反らしたのを、自分の事でいっぱいいっぱいな僕は気づく事が出来なかった…。
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