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次の日の昼休み、僕は昨日の金髪君と体育館の裏で向かい合っていた。
昼に太一が迎えに来る前にトイレに立ったところを金髪君に背後から襲われ(って言ってもいきなり襟首掴まれて引きずられてきただけだけど…)今に至る…
相変わらず恐い顔で僕を睨む金髪君は親の敵でも見るように僕を見ている。
「おい…」
「っ…」
地を這うような声に肩を揺らして咄嗟に目を閉じたら、舌打ちが聞こえた。
「……お前…太一さんが好きなわけ?」
なるべく落ち着けたような声音で問われた言葉に一瞬頭が真っ白になる。
閉じていた目を見開いて相手を見れば、バツが悪そうにこちらを見ていた。
何を急に言い出すんだろう…
相手の意図が分からず思わず黙りこむと、金髪君はギリギリと眼をつり上げていく。
「お前、まさか好きでも無いくせに太一さんにつきまとってんじゃねーだろーな!」
「えっ…?」
怒声混じりに告げられた言葉に体を竦めながらも相手を見遣れば、金髪君はジリジリと近寄ってくる。
「どうなんだよ!」
「なんでっ…君に言わなきゃいけないんだよ!」
「っざけんな!」
「っ!!」
振り上げられた拳に咄嗟に目を閉じた。
けれど襲ってくる筈の衝撃は全然無くて、代わりに金髪君が息を飲む音だけが聞こえた。
「これがお前の喧嘩か、蘭」
聞きなれた、低い声。けど怒りを含んだ声に僕は恐る恐る目を開けた。
「た…いち…」
見上げた太一は僕に背を向けて金髪君の拳を手の平で受けていた。
「一(ハジメ)何やってんだよ…まさか昨日コイツと喧嘩したのってお前?」
一と呼ばれた金髪君は眉を寄せれば一度頷いた。
その瞬間、
―ガッ
「ぅぐっ!」
「たっ太一!」
太一の拳が金髪君の頬を殴り付けていた。
「どういうつもりだ」
僕の時なんて比じゃないくらいに飛ばされた金髪君は呻きながら頬を押さえている。
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