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「…ゲホッ…精霊か…精霊が何で…」
相当な衝撃だったのか男は胸元を苦しそうに押さえながらマナを見ている。
「人間、お前の知識で図れる物事など些細な事でしかないぞ」
マナにしがみつくようにして泣いているとマナは男に向かって手を伸ばした。
「私の息子に手を出したんだ、楽には殺すまい」
「くっ」
「!駄目!マナやめてっ」
マナが呪文を唱える前に慌てて止めに入った。
「殺さないで!」
「李斗…まだ分からないのかい、人間は…」
「お願い…お願いっ」
男に向けられた手を掴んで必死に懇願すると、マナは苦々しいほど綺麗な顔を歪めて手を下ろしてくれた。
「この子に命を救われたな人間…」
マナは再び俺を抱き締めると、泉へと俺を運んだ…
取り残された男は不可思議な顔で既に居なくなった妖怪の事を思い出していた。結界に引っかかり、十字架への拒否反応、妖かしだという事は間違いなかったのに破滅の呪文が効かなかった。
それにあの精霊…。精霊は馴れ合いを嫌う。気高き生き物だ…それがあの妖怪を助け、あまつさえ息子だと告げた。
近くの村からの依頼だった。最近やたらと化け物がやってくると…被害も酷いからどうにかしてくれと言われ、結界を張って引っかかった妖怪。
最初は驚いた。顔は良く見えなかったがまだ幼いし、自分に対しての敵意も見られなかった。それどころか警戒すらも無かったから…
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