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次の日になって上総が迎えに来ると、上総は手に綺麗な服を持っていた。蒼い光沢のある滑らかな生地の詰襟の服に金の刺繍が施されている 「うわぁ…綺麗…」 「これは李斗に。祭りの正装なんだよ」 「え?!でも…高そうな服だし…」 「李斗用に尻尾の穴まで開けてある特注品だからな、着てくれよ。」 そう言うやいなや上総は俺が今着ている服を脱がしにかかった。 あっと言う間に着替えさせられ、着心地の良い服に何だか気恥ずかしい気分になる… 「似合ってるよ李斗」 「そ…そうかな…」 ハニカんで服の裾を引っ張っていたら、不意に頭の上に影が落ちて来て額に柔らかい感触… 「行こうか李斗、鬼の居ぬ間に…ってね」 「う…うん」 思わず顔を赤くすると機嫌良さげな上総は俺の手を引いて歩き出した。 町では賑やかな音楽が溢れていて、たくさんの物が売られていた。町の人たちもみんな笑顔で暖かい雰囲気だ。 「李斗、先にこっちにおいで」 手を引かれて連れて行かれたのは教会。本能的に体をひくつかせると上総は大丈夫だと微笑んで、教会横の小さな一軒家へと入った。
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