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―sideR
僕は人に自慢出来るような秀でた人間じゃない。
顔は平凡。顔のパーツが目立つわけでもなく、それを少しでも良くしようとするわけでもなく、制服を着崩してみたり髪を染めてみたりするわけでもない。特徴を無理矢理見つけてみれば笑うと右ほほにエクボが出来る事かな…僕の場合はあまり笑わないから気づく人が少ないけれど…
そんな僕はついでに身長も平均的で、頭がめちゃくちゃ良いわけでもなく運動がものすごく出来る訳じゃない。
むしろ普通がいい、派手な人種って苦手なんだ。
そんな普通を極めてきた人間が遥か上の方にあるキラビヤかな世界に手を伸ばしても…身分不相応で痛い目を見るのがオチなんだ…。
「蘭」
テノールの綺麗な声に名前を呼ばれて顔を上げると、教室の入口に僕の恋人…太一がこちらを見ていた。
太一は色が抜けきったシルバーの色の髪が印象的な世に言う不良。ピアスなんて全部で7個以上耳に空いてて見てて痛々しい。 制服も着崩しててズボンも腰って言うかそれお尻じゃないの?って場所まで下げてる。でも一番の特徴はその美形っぷりだ。目は綺麗なアーモンド型で少しつり目、鼻筋も通ってて顔もシャープ。身長なんか優に僕よりは10センチ以上高かったりする。
呼ばれて慌てて弁当を掴んで太一に近づくと見た目とは裏腹に優しい笑顔を向けてくれた。
「んな慌てなくてもいい」
「いや…待たせちゃ悪いし…」
控え目に呟けば仕方ないなって顔で俺の背中を軽く押していつもの場所へと促す。僕は太一の横に並びながらチラリと太一の顔を盗み見た。
ホントに…どうして太一と僕が付き合ってるのか不思議で仕方がない。
太一と付き合って1ヶ月、そればかりを考えてる…。
――1ヶ月前
その日は突然やってきた。
放課後、クラスの友達が少しビクビクしながら「田中、呼んでるよ」という言葉から始まった。
言われるまま顔を入口へ向けたらそこに太一が不機嫌丸出しの顔でこちらを睨んでいた。
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