IF…

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無事だと呟いたのに、酷く悲しげなマナの顔に何か引っかかる… 無事ならどうしてここにいないのか… 「李斗に会いたい…会って確認したい事があるんだ」 ドクドクと嫌な不安に心臓が早くなり、握りしめた手の平にはジットリと汗がにじんだ。 俺の言葉にマナは眼光を鋭くしてから嘲笑うかのように綺麗な口を歪めた。 「確認?李斗が人を襲った真意か…。それとも…お前の仲間が何に憑かれているかのかの確認か?」 「っ…じゃ…やっぱり…」 マナの言葉に一気に体が冷たくなっていく。李斗は気づいていた… 理由もなく人を傷つける子はじゃないと知っていた… 自分が傷ついても他人を優先する優しい子だと知っていた… それなのに… 自分があの時傷ついた李斗へと投げた言葉は、酷く李斗を傷つけた。友達になろうと差し出した手を握り返して笑ってくれた李斗の顔を思い出すと歪んでいく…全て諦めてしまったように無表情で俺を見る李斗… 「っ李斗に会わせてくれ…」 「李斗には会わせない」 「お願いだ、李斗に謝りたいことがある…」 「……。会ってお前が謝ったところで…もう李斗は戻らない…」 「どういう…」 「……李斗から頼まれた。お前の仲間を助けてほしいと…だから私が力を貸す。」 「そんな事より李斗に!」 「そんな事だと…?」 「ぐっ…」 マナは俺の首を掴んで地面へとなぎ倒すと首を絞めながら上から俺を見下ろした。静かな声には怒りが滲む。 「そんな事で片付けるような事で李斗は傷ついたのか…おまえのせいで李斗は壊れた…。もう笑わない…泣かない…それくらい李斗は傷ついた。…それでもお前の為にと李斗が頼んで来たから私が力を貸すんだ…」 マナの言葉に知らないうちに涙が溢れた。首を絞められて苦しいからじゃない… 俺の想像以上に李斗を傷つけた事や、李斗の思いまで軽んじた自分の浅はかさ…全てが罪悪感となって俺の心を締め付けた。
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