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「……、とにかく…この件が終われば私も李斗ももうお前には近づかない…」
マナは俺から手を離すと踵を返す。
俺は起き上がれないまま泉を見つめた。
―上総!
泉の中で笑う李斗の姿がよぎる…
李斗…李斗…ごめん…。
もう一度君に名前を呼んで欲しい…笑った顔がみたい…
傷つけた償いなら、どんな事でもするから…
もう一度…
結局、泉では李斗に会えないまま俺はマナにつれられて協会へと戻っていた。協会を嫌うマナを隣の家へと案内すればそこには驚いた顔のクリスがマナを見ていた。
精霊が来るとは思わなかったのか…どういう事だと困惑気味に問いかけてくるクリスに事情を説明しているとマナは静かに部屋を見渡した。
「…ふん…李斗の言う通り魔族か…」
マナは室内の匂いを嗅ぐと顔を歪めて一言呟く。
「エクソシスト、女をここへ連れてこい」
マナの言葉にクリスへ目配せすれば躊躇いながらも頷いて部屋から出ていった。
「…マナ…李斗は…どこにいる?」
「……」
「頼む…マナ…一度だけでいい、李斗に…」
「…うるさい」
「マナ!」
「…お前が李斗に会いたがる理由は何だ。ただ謝りたいだけか…謝って李斗が許すと言えば満足か」
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