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その時、僕の頭の中には色々な考えがめぐった。
―何で僕?
―え、何かしたかな?
―目立つなんてしてないのに
―むしろ平凡すぎてパシリにされる?
背中に冷や汗が流れる。
太一と視線を合わせたままフリーズしていると、太一は更にドス黒いオーラを放って「オイ」と呟いた。
その瞬間僕は目に涙を溜めて勢い良く立ち上がって太一に近づいていった。
目配せで「来い」と言っている様に歩いて行く太一の後ろを泣きそうになりながら…って言うか、泣いてたけど…そんな状態でついていった。
たどり着いた場所は屋上。
この鬼のような形相からは、とても僕にとって良い話とは思えない。
お金かな?お小遣い前だから財布の中には1000円しか入ってない…どうしよう…
そんな事を考えていたら太一がこちらを向いた。
「おい田中…って何泣いてんだよ…」
太一は面倒臭そうに俺を見てため息をついた。
「ずっずびばぜっ…」
「いいけどさ…田中お前俺と付き合えよ」
あまりにもサラッと言われた言葉に一瞬キョトンとした顔をして「どこにですか」と問いかければこれまた恐ろしい形相で「あ?」と睨まれた。
「違う。お付き合い。恋人同士だよ…」
コイビト…?コイビトってつまりはダーリン、ハニーの関係?
太一の表情は険しい。どう良い様にとっても「緊張のしすぎで顔が強張ってる」訳じゃない。さも面倒臭そうに、何で俺がって感じ。
僕も太一も男だ、偏見があるわけじゃないけど僕は知っている。太一は女好きで有名って。
ということは、この状況は明らかに『おふざけ』じゃないだろうか…。僕をからかうのが目的なのか…それとも目の前の太一とその仲間達の間での遊びなのか…
そんな事はどうでも良かった。
今問題なのはどちらの状況にせよ僕が『ノー』と言えないという事…
「ぇと…えっと…」
「付き合うよな?」
「…えっと…」
「……田中」
「はい!付き合います!」
ドスの効いた声に思わずそう叫んでいた。
それから僕達は毎朝一緒に学校へ向かい、昼ごはんは屋上でご飯を一緒に食べ、帰りも一緒に帰る事になった。
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