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『なんで…』
無意識に音を為さない唇が動いた。
どうしてそこまでしてくれるのか分からなくて…
上総は俺の唇を呼んで、ふっと表情を和らげるとそっと俺の頬を撫でた。
「李斗を愛してるから…」
「っ」
上総は優しく微笑むと更に言葉を続ける。
「李斗を愛してるから傍に居たいんだ…。李斗をいっぱい傷つけて…綺麗な笑顔も奪ったけど…愛してるから俺が傷を癒したい。
虫が良すぎるかもしれないけど、李斗の傷を癒すためなら殺されたって構わない」
上総の言葉に胸が苦しくなった。さっきみたいに痛みを伴った苦しさじゃなくて、温かいんだ…
「李斗…」
「っぅ…っく…」
気づいたら頬を涙が伝って、それを見た上総は嬉しげに笑って指先で涙を拭ってくれる。
「…っく…ば…いて…」
「…ぇ?」
「死んだりし…な…ぃでっ…俺の傍にい…て…ずっと居て!もぅや…上総に嫌われ…のは、嫌ッ…か…ずさっ上総…」
「ん…居るよ、ずっと居る…嫌ったりなんてしない」
溢れだした声に、上総は驚きながらも徐々に泣きそうに顔を歪めれば涙声で応えてもう一度強く抱き締めてくれる。
俺も嬉しくて泣きながら上総を抱き返したら、上総が嬉しそうに笑ってくれた。
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