IF…

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俺が暫く泣き続けている間、上総はずっと抱き締めていてくれて…漸く俺が泣き止むと少し体を離して優しく俺の涙を拭った。 上総はどこか寂しげに笑って俺の額に唇を寄せる。 「…声も出たのにまだ…表情は戻らない…か…」 「え?戻ってない…?」 自分では分からないけど…無表情で上総の顔を見上げていたみたいで… 「…ごめ」 「李斗が謝る事じゃない…」 「でも、俺…ホント今は幸せなのに…」 「李斗が…気づいてないだけで相当深く傷ついてるんだ…。李斗は優しいから…その傷を無意識に隠してるんだよ。…大丈夫、俺がゆっくり…また笑えるようにするから…」 ゆっくり近づいてくる上総の顔に、胸を高鳴らせながら目を閉じて待つけど、唇に触れる前に俺の体は後ろへと引かれて、変わりにバシャンと言う水音が聞こえた。 不思議に思って目をあければずぶ濡れの上総と俺を抱えるマナ。 「つっめて…」 「マナ?」
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