君と僕と…

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「蘭な…俺これから蘭って呼ぶから、お前も太一って呼べよ…あと敬語も無しな」 「え!…」 無理だと首を振れば太一が笑っていた顔から一変、鬼の様に歪ませたのを見て、慌てて頷いたのだった。 「それから蘭、明日から俺の分も弁当作って来いよ」 弁当を食べ終わった太一が告げた言葉に顔を向ける。 「え?…こんなんで良いんなら…」 「…良し…ごちそうさま」 綺麗に残さず食べきられた弁当箱に思わず笑みが漏れた。『ごちそうさま』なんて言われたのは久しぶりで嬉しくなる。 高校に上がってから父さんは仕事意外に楽しみを見つけたらしく、最近あまり会っていなかったから… 「じゃあそろそろクラス戻るか…」 「はい…あ、うん」 弁当箱を受け取って立ち上がる。太一は俺を教室まで送り、踵を返す。 僕も肩の力を抜いて小さく息を吐いた所で急に太一が振り返って俺の唇を奪った。 「…っ?!」 何が起きたか分からなくて、目を見開いて目の前にある綺麗な顔を凝視するしかできない。 太一はゆっくり唇を離すと帰りに迎えにくるからと告げて自分のクラスへと向かって歩いて行った。 教室にいたクラスメイトも固まってしまっている。当たり前だけど… 太一の背中が見えなくなって、僕の心臓が早鐘の様にバクバクと音を立て始めて、僕はフラフラと席についた。 ぼっ僕のファーストキスがっ!! そんな太一の奇行のせいで午後の授業は一切身が入らず… そして、次の日。 僕は見事に太一の弁当を作るのを忘れてしまった…。 「は?何でお前パン…」 屋上で、僕の分として持ってきた弁当箱を太一に渡して、購買で買ったパンを取り出すと太一が怪訝な表情を浮かべた。 昨日のキスのせいで、すっかり弁当の事なんて頭から飛んでしまっていた僕は、朝に太一が「今日の弁当何?」と問いかけてきた時に始めて思い出したのだった。 「忘れちゃって…」 誤魔化し様が無いと悟れば素直に白状。 でも作った弁当は太一に渡したわけだし約束を破った事にはならないだろう。
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