第二章

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「でも、みんなで遠征とかは楽しそうだよね。」 そう言って微笑みながらドデカい弁当箱をかき込む大男は筋肉こと河内剛。 先の勝負の野球で見せつけた長打力と強肩を見初められて、野球部から熱烈なラブコールを送られているらしいが、逃げるのに大変らしい。難儀なことだ。 「っていうか勝った場合の見返りというか、戦勝品って何なのだろな~。場合によっちゃ本気出してやってもいいぜ。」 このサルはまた物欲に走ってやがる。 バナナやるからキリキリ働けってんだ。 しかもお前の本気なんかたかが知れてるんだよ。 そんな視線に気づいたのか、サルが突っかかってきた。 「んだ?陽平さんよ~?俺の顔に何かついてんのか?ああ?」 何この中学生みたいな奴。 保健所からやり直してこい。 「保健所!?中学校とか、百歩譲って小学校とかからじゃなくて保健所から!?」 「お前も他人の心が読める悪魔の一族なのか!?」 「何の話だよ!それより何で保健所なんだよ!」 まだ引っ張るか、そこ。 「猿だからに決まってんだろ。」 「あ、なーるほど。殺す。ブチ☆殺す。」 「あ!岩村先生~!!」 「ごめんちゃい!」 サルは机に突っ伏して泣き崩れていた。 さながら社会的権力の前になすすべもなく佇む人のようだ。 おっと例えが生々しすぎた。 そんな様子を見て広太はやれやれといった感じで話を戻す。 「それにしても欅学院について知ってることがあまりにも少ないよな。まあ、向こうも同じだとは思うが。直接調査するには距離がありすぎるしな。…そうだ。テル、なんか調べてみたか?」 とここでみんなの話を聞きながら黙々と箸を進めていたテルこと橋田光明に話を振った。 「一応、携帯からは調べてみたが。表面的なことしか分からん。…パソコンでやってもあまり変わらないだろう。」 とりあえずは有用な情報はなかったということだった。 それからも休み時間中に話を進めていったが、予想以上に勝負の準備が大変だということに気づいただけだった。
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