第一章

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5限担当の教師が去ったのを見計らってから、教室へ戻ると予想通りアホ面を下げたサルこと"チビ"工藤義隆が寄ってきた。 「おい、どこ行ってたんだよ?」 相変わらずこいつの声はキーキーうるさい。適当に流しておく。 「ああ、ちょっと逢い引きに。」 「逢い引きってなんだ!よく分からねぇがなんか卑猥だ!」 逢い引きの意味も知らないとは残念な子だ。でも、卑猥だと思ってるあたりカンがいいのか悪いのか。 俺らの話が聞こえたのか、広太もやってきた。 長身に長い黒髪というどこか恐いイメージがあるが、実は親しくなるとすごく良い奴だと分かるというちょっと損な奴だ。長い髪で分かりづらいが、所謂イケメンで隠れファンも多いとか。 「よう。よく眠れたか?」 「…まあ、ボチボチ。」 「そりゃ結構なことで。」 広太には俺が先程やっていたことは完全に見透かされているようだった。本当に広太には歯が立たないというか、相手にされないというか。 尚もつっかかってくるサルを交わしつつ、席に着いて6限までのんびりしようと寝る体勢に入ったところで刺客が現れた。 「オッス陽平!オラブッシュ!」 わけの分からないことを元気よく言い放ってから威勢よく俺の背中をぶったたいたのは、ミステリアス柳瀬こと柳瀬貴由だ。 その横で苦笑いをしてるのは美人という形容がまさに似合うお方、園原夕乃である。
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