第一章

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そんなある日のことだった。 今日は三組と四組のサッカー部の連中と一緒に昼食を取っていた。 三組の山田君と勝負を通して仲が良くなったので、たまにこうして一緒に飯を食うことも増えたのだ。高杉君や石原君などともよく一緒する。 勝負は確かに学力向上、クラスの結束も強めるが、個人としても人間関係が広がるので、改めてこの制度の有用性を感じていた。 話が一区切りついたところで山田君が炭酸飲料を飲み干し、俺に質問を投げかけてきた。 「そういや那須は部活に入ってなかったよな?」 いきなりの質問だったので肯定してしまった。部活にでも勧誘されるのだろうか、何て断ろうなどと無駄な考えを巡らせていると、次の質問はあさっての方向にベクトルが向いていた。 「んじゃ、先輩とかの話聞かねーのか。」 確かに知ってる先輩はほとんどいないし、いても顔を見たことがある程度で、話など一切しない。 この質問に対して当然疑問に思ったので、その旨を伝えるとわざと声を顰めるようにして言った。 「あのな、先輩たちがどうにも何かを隠しているらしいんだよ。主に勝負のことで。」 そう言ってから"な?"というようにサッカー部の連中に同意を促すとみんな肯いた。 そういえば、高杉君や石原君たちの時も、こんな話が出たことがあるような気がする。 その時は会話の流れでちょいと出てきたようなものだったから、特に気にとめるようなこともなかったんだけど、改めて話として出されるとなかなか妙な話である。
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