第一章

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教室に戻ると、その方はいつも通り俺の隣の席にいた。 これまたいつも通り、後ろの席の人と談笑している。 こっちが下手に出てお願いしに行くと、つけあがりそうである。だからといってシリアス全開で行くと、みんなの気を引いてしまう。 それでは駄目だ。あくまでフランクに、それでいてちょっと強気に誘ってみることにする。 頭の中で何回か予行練習をしてから自分の席へと向かった。すると向こうもこちらに気づいたようだ。 「おいっす。洋平。昼御飯は美味しかったかい?」 「まあな。」 話はちゃっちゃとつけちゃっと片付けたほうがいいだろう。よし。今だ。 「貴由。」 うわ。意識し過ぎて、ちょっと俺らしくない低い声出ちゃったよ。 貴由も「は、はい。」とか固くなってるし。 まあ、いいや。続けちゃえ。 「その…今日の放課後、部活が始まるまで付き合ってくれるか?」 あれ。こっちまで固くなってちょっと練習と違っちゃったけど、言いたいことは伝わっただろう。 貴由も固くなってるが、了解したようだし。 何故か夕乃は別の意味で固まってるみたいだけど。 5限6限は何故か貴由はいつもより口数が少ないし、夕乃は当てられても答えるまで数秒のタイムラグがあった。何でもソツなくこなす彼女らしくなかった。 まあ、そんなことがあったけど俺の頭は問題の件についての思考で頭がいっぱいであった。
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