第一章

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そして放課後。 ずっと考えっ放しだったので、数学でも全く眠くならなかった。 広太とサルには用事があるからと言って、先に帰ってもらった。 みんなが教室から帰り終わるのを見計らって残っていた貴由と棟の違う空き教室へと移動することにした。 その旨を貴由に伝えると、 「あ、う、うん。」 というふうに従順についてきた。 夕乃のことといい、マジな俺の顔って迫力あるのかと変な自信に目覚めそうになっていると目的の空き教室へとついた。 鞄を適当な机に置いてから、大きく伸びをする。 後ろを振り返ると貴由がドアのところで突っ立っていた。 「どうした?まあ、ここに座ってくれ。」 そう言って椅子を引いてあげる。 「え?…うん。」 貴由はハッとしてから、しずしずとドアを閉めてゆっくりと椅子に座った。 午後から静かだし、どことなく動きがぎこちない。 どこか調子が悪いのだろうか。 そう思って聞いてみても、何でもないの一点張り。 仕方ないので、本題に入ることにした。 ひとつ咳払いをする。 「今日はひとつ聞きたいことがあって。」 「うん。」 「その…答えづらいとか、答えられなかったら、それでいいから。あまり根掘り葉掘り聞くつもりはないし。話したくないこともあるでしょ。」 これは隠密部隊に所属する貴由のことを考えてだ。規則違反は厳しく罰せられるらしいしね。 「う、うん。」 貴由は身構えている。それもそうだろう。 「あんまり貴由とギクシャクしたくないしさ。」 「あ…う、うん。」 「それじゃ、聞くから。はいかいいえで答えてね。」 「…うん。」 何故か貴由がより一層身を固くした。 ヤバい。真剣だな。 俺もこれに見合う態度を取らなければと思い、はっきりと伝えた。
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